医学論文を素早く読んで記録する方法(レビューシートの活用)

臨床研究の始め方

こんにちは。管理人のハル(@haru_reha)です。前回は文献検索の方法をご紹介しましたが、今回は医学論文を素早く読んで記録する方法をご紹介します。いつもの如く、私自身が実践している方法を書いているだけなので、これが一番良い方法とは限りません。参考程度にお読みください。

▼文献検索の方法はこちら▼

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なぜ医学論文を上手く読めないのか

正直な所、私は研究を始めるまでは医学論文をそれほど読んでいませんでした。どちらかというと教科書を読んで勉強することが多かったように思います。でも、今は逆に教科書はあまり読まず、論文を読むことの方が多いです。なぜかというと、論文の方が「新しい情報」かつ「一次情報」が手に入るからです。

論文を読むことに慣れていない頃は、一つの論文を読むのにすごく時間がかかっていました。また頑張って読んだ割には内容が頭にあまり残っておらず、いざ情報を使う(outputする)場面になるとKeyとなる情報が分からず結局使えないという状況になっていたように思います。

その原因として

① 論文の定型を知らなかったこと
② 論文を一から十まで全部読んでしまっていたこと
③ 読んだ論文を記録していなかったこと

がありました。

 

反対に

① 論文の定型を理解すること
② 論文の内容を絞って読むこと
③ 読んだ論文を必ず記録しておくこと

を押さえることで、読んだ論文を「使える情報」にすることができます。

論文の定型を理解する

医学論文の書き方はどの論文もほぼ同様になっています。つまり、論文にはある程度の定型があるわけです。これは日本語論文でも英語論文でも同じです。その定型は以下のようになっています。

・タイトル(title)
・要旨(abstract)
・緒言(introduction)+目的(aim)
・方法(method)
・結果(result)
・考察(discussion)+限界(limitation)
・結語(conclusion)

定型を理解するだけでも、自分が知りたい情報がどこに書いてあるか大体予測できるので、論文を読む心的負担がかなり減ります。

論文の内容を絞って読む

論文の内容を理解するために、一から十まで全部読む必要はありません。研究前のsurveyなどでは沢山の論文を読む必要があるので、それらを全部読もうと思うと時間がとても足りません。

Keyとなる情報に焦点を絞って読むことで、簡潔に素早く論文の内容を理解することができます。そして先程示した定型を理解することで、どこに何が書いてあるのかはほとんど分かりますので、欲しい情報だけをピックアップして読んでいくことができます。

論文を書く場合は一字一句注意しながら書いていきますが、読む場合は反対にどんどん端折って読んでいきます。もちろん、内容を誤解しないよう注意は必要ですが。

私が論文を読む順番は

① タイトル
② 要旨
③ 目的(緒言の最後)
④ 方法(対象・アウトカム)
⑤ 結果(図や表をメインに)
⑥ 結語
(⑦ 限界)

です。それぞれのポイントを簡単に説明していきますね。

タイトル

まずは論文の顔となるタイトルには必ず目を通します。タイトルは論文の内容を最も短い言葉でまとめたものですので、基本的にはタイトルを読めば何に関する論文なのかはつかめると思います。まあタイトルを見ずに論文を読み始める人は少ないかと思いますが…

要旨

そして次に要旨を全部読んでしまいます。要旨は研究の目的・方法・結果・結語が簡潔に示してある部分ですので、ここを読めば論文の大筋が理解できます。時間がないときは要旨を中心に読み、気になる所だけ本文を読む程度のこともあります。

目的(緒言の最後)

次に研究の目的を確認します。要旨にも目的は書いてありますが、詳細な目的は「緒言の一番最後」に必ず記載してあります。緒言の基本的な流れとしては

①研究テーマに関する現状

②研究テーマに関する問題点・課題

③本研究の目的

となっていますので、緒言の最終段落あたりをみると目的が書いてあります。「そこで本研究では…」などの言い回しで始まることが多いので、そこを探せば見つけやすいです。

方法(対象・アウトカム)

研究の目的を理解したら、次に方法をチェックします。ただ、全部は読まずに対象(疾患、年齢、n数)アウトカムを確認します。次に確認する「結果」でもn数やアウトカムは確認できることも多いので、ざっくり読むくらいで良いかなと思います。評価方法の詳しい記載などはよほど気になる場合以外は飛ばしています。

結果(図や表を中心に)

次に結果ですね。結果は図や表でまとめられていることが多いので、そこに目を通します。ほとんどの場合、本文を読まなくても理解できるように作成してありますので、図表を見るだけで大方の結果は理解できます。時間がないときは「どこに有意差が出たのか」「メインとなるアウトカムの結果はどうだったか」を確認するのみでも良いと思います。ただ、バイアスがかかっていないか、他に交絡因子はないか、など結果を鵜呑みにせず疑ってかかる姿勢が大事です。

結語

著者が結果からどんな結論を導き出したのかを「結語」で確認します。結語は当然ながら本文の最後に記載されています。結果だけを見ると何が言いたいことなのか案外分からないこともあるので、筆者が最終的に何を証明したかったのかを確認します。ただ、筆者の意見(バイアス)が含まれていることもあるので、「結果」と「結語」は分けて考えた方がいいかもしれません。

限界

最後に研究の限界を把握しておきます。限界は「考察の最後あたり」に記載してあることがほとんどです。どんな研究にも必ず限界があります。この研究だけで明らかにすることができない点や、今後さらに研究が必要な点について記載してあります。研究前のsurveyでは、限界を確認しておくことは重要になります。

読んだ論文を記録すること(レビューシートの活用)

このように要点を絞ることで論文を読むスピードは格段にアップします。しかし、ただ読むだけではいざ自分が論文を書くときにその情報を上手く使うことができません。読んだ情報をきちんと使える情報にするためには、読んだ論文を簡潔に記録しておくことが大切です。

そこで活用するのがレビューシートです。レビューシートとはExcelなどを使って、論文のタイトル・雑誌名・著者・目的・方法・結果・結論などを簡潔に記録しておくものです。

例として私がExcelで作ったレビューシートをダウンロードできるようにしています。特に書式が決まっているわけではありませんので、自由にアレンジしてもらってよいです。

 

論文を読んだときは必ずこのレビューシートに記録を残しておきます。

簡単でもいいので必ず記録しておくことが大事です!

書き方は↑「レビューシートの例」のNo.1の所に例を記載しています。

それぞれの項目を、簡潔に記録しておきます。詳しく書きすぎると時間がかかりますし、後で読み返すのも大変なので、必要最小限に記載しておきましょう。一番右に「備考」という欄がありますので、そこに限界や気になった点をメモしておくと良いと思います。

レビューシートへの記録はとても重要です。自分が論文を何本読んだのか一目で分かりますし、自分が論文を書く際に引用すべき論文が非常に見つけやすくなります。むしろ、記録をしておかないと全く引用ができません(使いたいときに記憶が曖昧になったり、どの論文だったか分からなくなる)。

論文を読んだら、同時に記録まで終わらせておきましょう。後で記録をつけようと思っていると、高確率で忘れてしまいます…。

まとめ

以上、論文を素早く読んで記録する方法をご紹介しました。
ポイントは以下の3つでした。

① 論文の定型を理解すること
② 論文の内容を絞って読むこと
③ 読んだ論文を必ず記録しておくこと

論文をいかに素早く的確に読むかで、研究の進み方が変わってくると思います。私もまだまだ論文検索能力・読解能力は低めですが、量をこなしていけば鍛えられていくと感じています。

では、また!

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