こんにちは。管理人のハル(@haru_reha)です。今回はクリニカルクエスチョン(clinical question)をリサーチクエスチョン(research question)に変換する方法について書きました。これは抽象的な疑問を具体的な疑問に変化させて「証明できる形」にする、ということです。「抽象」「具体」という言葉のイメージを掴んで頂ければと思います。
リサーチクエスチョンとは?
クリニカルクエスチョンとは「臨床の中で生じる疑問」のことでした。一方でリサーチクエスチョンとは直訳すると「研究のテーマとなるような疑問」、意訳では「解決すべき疑問」とでも言えるでしょうか。クリニカルクエスチョンは抽象的な疑問であるのに対し、リサーチクエスチョンは研究で解決・証明することができるように疑問を具体的にしたものです。
「抽象」と「具体」とは?
「抽象」と「具体」という言葉って、意外と分かりにくい言葉だと思います。特に「抽象的」ってどういうことなのか分かりにくいですよね。私も最近ようやく区別がつくようになってきましたが、初めのうちは非常に曖昧で、うまく使い分けができませんでした。
「抽象的」と「具体的」というのは、どちらが良いとかいうものではありません。どちらも必要とされる場合があり、場面によって適切に使い分ける必要があります。抽象と具体を行ったり来たりしないといけない時もあります。
例えば「年をとると筋力は落ちるのか」というのは抽象的な疑問です。「年をとる」というのは何才経過することなのかという具体性はないですし、「筋力」というのもどこの筋力なのかという具体的な部位は分かりません。
これを具体的な疑問に変換すると「70才男性の握力は20才男性と比べて低いのか」とか「70才女性の膝関節伸展筋力は10年後に低下するのか」などになるかと思います(具体的な疑問は無限に考えられる)。
この場合
「筋力」 → 「握力」「膝関節伸展筋力」
などのように抽象→具体へ変換していることになります。
証明するには「具体的」でなくてはならない
研究で物事を明らかにするためには一旦「具体的」な疑問にしなければなりません。さきほどの「年をとると筋力は落ちるのか」という疑問だけだと、何と何を比較すればよいのかはっきりしませんよね。
でも「70才男性の握力は20才男性と比べて低いのか」という疑問であれば、比べる対象がはっきりとします。単純に70才男性の握力と20才男性の握力を沢山調べて2群で比較すればよいですよね。
つまり、研究を始める際には抽象的な疑問(=クリニカルクエスチョン)を具体的な疑問(=リサーチクエスチョン)に変換する必要があります。
クリニカルクエスチョンへ変換する際によく使われるのはPICO(またはPECO)と呼ばれるものですね。P=patient(どんな人に)、I(E)=intervention(exposure)(どんな介入・曝露をすると)、C=comparison(何と比較して)、O=outcome(結果がどう異なるか)を具体的に書いていく、というものです。この辺はPT協会HPでも詳しく書いてあるのでそちらもご参照ください。
さっきの例でいうと
E=加齢
C=20才男性
O=握力
という具合になるかと思います。
結論は「抽象的」な方が分かりやすい
研究で証明するためには具体的なリサーチクエスチョンに変換する必要があることを説明しました。でも、それを証明したのちの最終的な結論を書く際には再度「抽象的な」言い方にした方が分かりやすい場合があります。
例えば「70才男性の握力は20才男性と比べて低かった」という結論だと、結局何が言いたいのか分かりにくくなります。元々のクリニカルクエスチョンは「年をとると筋力が落ちるのか」ということでした。
それを調べるために「年をとる=50才」「筋力=握力」と具体例を挙げて検証したわけですよね。ですので、最終的に言いたいことは「加齢により筋力が低下する可能性が示唆された」ということです。安易に言い切ってしまわないよう「可能性が示唆された」など少しぼかした表現を使うことが多いように思います。
このように、検証には具体的なリサーチクエスチョンが必要ですが、最終的に伝えたいことは再度抽象化することで理解されやすくなります。この作業が「抽象」と「具体」を行ったり来たりする作業です(私の感覚です…笑)。
まとめ
以上、クリニカルクエスチョン(clinical question)をリサーチクエスチョン(research question)に変換する方法をお伝えしました。個人的には「変換する方法」というよりも「抽象と具体の概念」を掴むことがポイントかな、と感じます。この概念は文章を書いているとよく遭遇します。「ここはもうちょっと具体的な方がいいかな」とか「ここは抽象的な表現にしよう」とかいう感じです。
抽象と具体を使い分けることが出来れば、研究も少し進みやすくなるのではないかと感じております。では、また。
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