肺癌切除術前後での6分間歩行試験規定因子の相違

論文紹介

こんにちは。理学療法士のハル(@haru_reha)です。

深KOKYUのサイト内でカテゴリーを作っていたものの放置していた「論文紹介」の1記事目を執筆してみます。このカテゴリーでは呼吸リハビリテーションに関する論文をざっくりとまとめて紹介します。紹介する論文は主には自分が気になったものが中心になるかと思います。

記念すべき(?)1記事目は肺癌手術前後で6分間歩行距離の規定因子を調査した石坂勇人先生の論文です。私もちょうど同じような研究デザインを考えていましたが、この論文には敵いそうにありません(笑) それではどうぞ。

論文の基本情報

題名:肺癌切除術前後での6分間歩行試験規定因子の相違

雑誌名:理学療法科学31(3):461-467

発行年:2016年

著者:石坂勇人、水嶋優太、阿久津瑞季・他

 

はじめに

・日本での死亡率は悪性新生物(癌)が第1位となっている

・部位別でみると肺癌は男性の第1位、女性の第2位である

・治療技術の進歩により肺癌の手術適応が拡大している

・肺切除術後には肺の縮小により呼吸機能や運動耐容能が低下する

・運動耐容能の改善にはある程度の期間が必要である

・退院時に術前と比較して身体機能がどう変化したかを把握する必要がある

・運動耐容能の評価指標としては6分間歩行試験がある

・肺癌切除患者では手術前後で歩行距離に影響を与える因子が異なる

・歩行距離に関連する要因は不明である

 

目的

肺癌切除患者の周術期における呼吸機能と6分間歩行試験で評価されるSpO2、脈拍数、呼吸困難感の変化を術前と比較するとともに、歩行距離に影響する要因を明らかにすること

 

対象

肺癌切除手術を受けた57名

年齢:67.1±9.4歳

入院前ADL:自立

 

方法

①術前 vs 術後7日目で以下を比較

・6分間歩行距離

・安静時SpO2

・歩行中最低SpO2

・安静時PR

・歩行中最高PR

・安静時SBP

・歩行後SBP

・安静時DBP

・歩行後DBP

・安静時呼吸困難感(VAS)

・歩行中呼吸困難感(VAS)

・等尺性膝伸展筋力

・ヘモグロビン値

 

②6分間歩行距離を従属変数とした重回帰分析

<独立変数>

・年齢

・%VC

・1秒率

・PR

・SBP/DBP

・呼吸困難感(VAS)

 

結果

<有意差があったもの>

・6分間歩行距離(m) 431.3 vs 379.6

・歩行中最低SpO2(%) 94.8 vs 92.8

・安静時PR(bpm) 76.9 vs 83.6

・安静時DBP(mmHg) 80.6 vs 73.5

・安静時呼吸困難感(VAS) 0.7 vs 7.4

・歩行中呼吸困難感(VAS) 28.6 vs 35.9

・VC(L) 3.3 vs 2.4

・%VC(%) 110.5 vs 78.2

・FVC(L) 3.1 vs 2.3

・%FVC(%) 103.2 vs 75.2

・1秒量(L) 2.4 vs 1.7

・ヘモグロビン 男性13.3 vs 12.0 女性12.7 vs 11.2

 

<重回帰分析結果(有意な変数)>

術前

・歩行中最高PR

・安静時PR

・年齢

・%VC

・安静時呼吸困難感

・等尺性膝伸展筋力

 

術後

・年齢

・歩行後SBP

・%VC

・歩行中最高PR

・安静時呼吸困難感

 

まとめ

6分間歩行距離には主に呼吸器系、循環器系、年齢が関連因子となり、術前後の影響項目は異なることが明らかとなった。術前はPRによる心拍予備能が強く影響し、術後は年齢の影響が強く高齢者ほど運動耐容能は低下しやすいと考えらえた。

コメント