シロート統計学講座 其の21
シロート統計学講座ではEZRという無料統計ソフトを用いて、基礎的な統計解析のデモンストレーションを行っております。前回は反復測定分散分析を行いました。

今回は同じく「対応のある3群以上の連続変数を比較する」統計解析で、ノンパラメトリック検定であるFriedman(フリードマン)検定を実践します。
デモデータ
デモデータは前回と同じものを使用します。
このデモデータは、ある運動プログラムを行い、0週目・1週目・2週目で握力を測定した仮想データとなっています。
握力(kg)は連続変数であり、かつこのデータは正規分布に従っているのでパラメトリック検定を行うのが普通ですが、ノンパラメトリック検定でも問題はありません。ただし、パラメトリック検定が使える条件でノンパラメトリック検定を行うと、パラメトリック検定より厳しめのP値となります。
今回は比較的簡単かと思うので、さらっといきましょう。
データの取り込み
まずはExcelデータをEZRに取り込みます。
データを囲って「右クリック」→「コピー」(Ctrl+Cでも可)
「ファイル」→「データのインポート」→「ファイルまたはクリップボード, URLからテキストデータを読み込む」
握力のデータなのでデータセット名は「grip」にしましょう。そして「クリップボード」と「タブ」にチェックをつけて「OK」ですね。
データセット名が「grip」になったことを確認し、表示を押して正しくデータが表示されれば取り込み完了ですね。
Friedman検定を行う
Friedman検定はノンパラメトリック検定ですので、正規分布や等分散性といった前提条件は特にありません。さっそく検定を実施してみましょう。
「統計解析」→「ノンパラメトリック検定」→「対応のある3群以上の間の比較(Friedman検定)」
「繰り返しのある変数」は「W0~W2」を全て選択します(Ctrlキーを押しながらクリックしていくと複数選択できます)。多重比較は「Bonferroniの多重比較」を選択しておきましょう。
「OK」をクリックするとFriedman検定と多重比較が実施され、結果が表示されます。
Friedman検定の結果解釈
まず >apply と書いた部分に各群の中央値が記載されています。握力の推移は、W0で27.5kg、W1で28.0kg、W2で29.0kgと増加していますね。
そして次にFriedman検定の結果を見ます。これはW0~W2の間で握力の変化があるかという検定になります。P<0.05で有意差ありとなります。
5.82e-11という数値は、5.82×(10の-11乗)という意味ですね。めちゃくちゃ小さいP値になっているということです。よって握力はW0~W2の間で有意に変化していることが分かりました。
そして、最後にどの群間に有意差があるのかを確かめるための多重比較の結果を見ていきます。
左上がW0-W1、左下がW0-W2、右下がW1-W2 のP値が表示されています。今回は全てP<0.05なので、いずれも有意差ありとなっています。
よって今回は「握力は0週目から2週目までの間で有意に変化し、0週目と1週目、1週目と2週目、1週目と3週目のいずれも比較においても有意差がみられた」と結論づけられます。
まとめ
以上、EZRでFriedman検定を行う方法を説明しました。ノンパラメトリック検定は特別な前提を必要としないので、実施はシンプルですね。
ただ最初に書いたように、パラメトリック検定が使える条件(正規分布・等分散性)であればノンパラメトリック検定は厳しめの判定になるので、基本的にはパラメトリック検定の使用が好ましいと思います。正規分布に従わない連続変数や、順序変数を比較する場合にはFriedman検定の出番となりますね。
さて、今回で①~⑥の統計解析を全てデモンストレーションしました。
ここまでは主に群間比較を行う基本的な統計解析でしたね。次回以降はSTEP4「統計解析の結果解釈」に移ります。単純な群間比較ではなく、相関・多変量解析といった数値の関係性をみる統計解析へとコマを進めます。ここからの話は研究を行う上で非常に大きな武器となる所です。
STEP1 統計解析の種類
STEP2 統計解析の選択方法
STEP3 統計解析の実施方法
STEP4 統計解析の結果解釈
やはり群間比較だけでは交絡因子の影響を除去できませんし、因果関係の推論も不十分になってしまいます。多変量解析による交絡因子の補正などを行えば、データが現実味を帯びてきますよ。
▼其の22に続く▼

《シロート統計学講座 in YouTube》
EZRでFriedman検定を行う方法を動画にしてみました。ブログを読んだあと、実際にEZRを操作している所をこちらで見てみてください。
コメント